「再雇用後の給与は、今よりだいぶ下がりますよ」
人事の担当者からそう説明を受けたのは、定年が数年後に迫ってきたころだった。
なんとなく下がるだろうとは思っていたが、具体的な数字を示されると、想像していた以上の下げ幅に、正直言葉を失った。同じ会社で、同じように働き続けるつもりだったのに、これほど収入が変わるのか、と。
その日から、再雇用のことだけでなく、副業のことも真剣に考えるようになった。
再雇用・嘱託の給与は、一般的にどれくらい下がるのか

まず気になったのは、再雇用後の給与が、一般的にどれくらい下がるものなのか、という点だった。
調べてみると、企業によって差はあるものの、定年前の給与の6割から8割程度になるケースが多いという情報が目立った。役職手当や責任手当がなくなり、月給制から時給制・日給制に変わることでボーナスの扱いも変わる、という説明もあった。
厚生労働省の調査でも、60〜64歳の月額賃金は、55〜59歳と比べて下がる傾向にあるとされている。ただし、業種や企業規模によって差が大きく、金融・保険業など高齢期も比較的高い給与を維持しやすい業種もあれば、下げ幅が大きい業種もあるようだった。
自分の場合がどうなるかは、正直この記事を書いている時点でもはっきりとは分からない。ただ、「6〜8割程度」という目安を知っただけでも、心の準備という意味では大きかった。
副業を組み合わせるときに気をつけたい、年金との関係
給与が下がるなら、副業で補えないか。そう考えるのは自然な流れだったが、調べを進めるうちに、副業の収入もそう単純ではないことが分かってきた。
在職老齢年金の支給停止のしくみ
60代以降、年金を受け取りながら働く場合、「在職老齢年金」という仕組みにより、給与(と、場合によっては副業所得)の額に応じて、年金の一部が支給停止になることがあるらしい。
一般的な仕組みとしては、再雇用の給与と年金の合計が一定額を超えると、超過分の半額が年金から減額される、という説明が多く見られた。この「一定額」は、本記事を書いている時点の情報では月50万円程度とされているが、この基準は今後変わる可能性もあるし、副業の所得がどこまで合算の対象になるかは、雇用形態(会社に雇われる形か、個人で請け負う形か)によっても扱いが変わってくるようだった。
「副業をすればするほど、年金が減ってしまうのでは」と一瞬不安になったが、そう単純に断定できるものでもなさそうだ、というのが調べてみた率直な印象だ。
高年齢雇用継続給付金も縮小傾向にある
もう一つ、再雇用後の収入減を補う制度として「高年齢雇用継続給付金」というものがあるらしいが、2025年4月以降、この給付率が縮小される方向で見直されている、という情報も目にした。以前より、収入減をカバーする効果は小さくなっている、ということのようだ。
退職金の受け取り方でも、手取りは変わるらしい
もう一つ気になったのが、退職金の受け取り方だった。
退職金を一度にまとめて受け取る「一時金」形式は、「退職所得控除」という税制上の優遇が大きく、分割で受け取る「年金」形式より手取りが多くなることが多い、という情報を見かけた。ただし、これも会社の退職金制度や、個人の状況によって変わってくる部分のようで、一概には言えないようだ。
「再雇用か副業か」ではなく「両方」で考えてみる
ここまで調べてみて、私は「再雇用か副業か」を二者択一で考えるのをやめることにした。
再雇用後の給与だけで生活を組み立てるのではなく、副業で少しずつ収入源を増やしておく。ただし、年金との合算調整があることは頭に入れておき、「副業を増やせば増やすほど得」というわけではないことも理解しておく。
そう考えると、副業は「再雇用の代わり」ではなく、「再雇用と組み合わせる、収入の柱の一つ」というイメージに近いのかもしれない、と感じるようになった。
迷ったら、まず確認したい相談先
在職老齢年金の支給停止ライン、高年齢雇用継続給付金の条件、退職金の受け取り方による税金の違いは、いずれも個人の状況によって結論が変わってくる部分だと思う。
私は、実際に再雇用や年金の受給が近づいてきたタイミングで、ハローワークや年金事務所、必要であれば社会保険労務士に確認しようと考えている。この記事に書いたことは、あくまで一般的な仕組みの整理であり、実際の金額や条件は、その時々の制度や個人の状況によって変わってくる部分だと思う。
まとめ|どちらが得かより、両方の仕組みを知っておくこと
再雇用後の給与水準を知らされたとき、正直、動揺した。
でも、副業のことも含めて調べてみると、「再雇用か副業か」で悩むより、「両方の仕組みを理解した上で、自分の状況に当てはめて考える」ことのほうが大事なのだと感じるようになった。
- 再雇用・嘱託の給与は、一般的に定年前の6〜8割程度になる傾向があること
- 副業を組み合わせる場合、在職老齢年金との合算調整があること
- 退職金の受け取り方によっても、手取りが変わりうること
50代から60代にかけての働き方は、一つの正解があるわけではないと思う。もし今、再雇用後の収入に不安を感じている方がいたら、「どちらが得か」を急いで決めるより、まずは両方の仕組みを知っておくことから始めてみてもいいかもしれない。
本記事は、筆者個人が再雇用・嘱託と副業の収入構造について調べ、考えたことをまとめた記録です。給与水準、在職老齢年金の支給停止ライン、高年齢雇用継続給付金の条件などは、制度改正や個々の状況によって変わります。実際の判断にあたっては、ハローワーク・年金事務所・社会保険労務士など専門窓口への確認をおすすめします。

